ボクの心の中にある家族との想い出

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たった2両編成のディーゼル列車は、
もの凄い轟音を立てながら何度も何度もトンネルをくぐり抜ける。
車体の色はクリームとオレンジ。
その頃はそれが「キハ58」だとか、
詳しいことは知らなかったけれど大好きだった、その列車が。

1年に1度、母の実家への帰省。
母と、ふたりの兄との長い1日。
鉄道や船、乗り物が好きだったボクには夢のような1日でもある。
南海フェリーの中で幕の内弁当を食べたり、
立ち食いの月見うどんを啜ったり、
小松島港で竹串にささった竹輪を買ったり。
幕の内弁当のご飯にかかった黒ごま、竹輪を包む、あの包装紙の匂い、
すべてが懐かしい。

父は後からやってきて、一晩だけ泊まっていくことが多かった。
それでも何だか嬉しかった。

やがて、長い旅路が終わる。
列車が無人駅である浅川駅に着くと、お祖母ちゃんが待っている。
アスファルトがベッタリと塗られた紺色のプラットホーム。
線路は単線、電柱は木だった。
駅は高い場所にあって、スロープを下ったところに母のお母さん、
お祖母ちゃんが黙って待っていてくれる。

母とお祖母ちゃんの1年ぶりの会話はとても簡単なものだけど、
暖かいものに包まれていた。

ボクもお兄ちゃんたちも、お祖母ちゃんのもとに帰った母の穏やかな気分を
子どもながらに感じることができた。
母は年に1度、夏休みの帰省が何よりも楽しみだった。

3日間だったか、ときには4日間だったか、
母が安らいでいるのが、ボクらの安らぎだった。

海で泳いだり、かき氷屋さんでミルク金時を頬張ったり、
いとこのお兄ちゃんやお姉ちゃんに憧れを抱いてみたり……。
田んぼはいつも、いい匂いだった。
「ごとまっつぁん」と呼ばれているカエルが
ボクの頭の上を飛び越えたのは、まだボクが小学生になる前だった。

ああいう故郷(ふるさと)みたいなもので見て感じたものは、
大人になってからは得ることのできない宝物だと思う。
我が子にも、ああいう夏の素晴らしい想い出みたいなものを感じさせてあげたい。

そしてボク自身もまた、ああいう旅を無性にしてみたくなる。
だけども、ああいう旅はもうできないのかもしれない。
そう思うと、寂しい。
ああいう旅がしたくて、したくて、たまらない。

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