幻のターミナル旧万世橋駅
その遺構で大正浪漫を感じた

かつては交通の要衝として栄え、赤レンガの美しい駅舎がシンボルだった中央線・万世橋駅。1912年(明治45年)の開業から1919年(大正8年)の東京駅延伸までは中央線のターミナルとして機能し、目の前の須田町交差点は人や自動車、路面電車がひっきりなしに行き交う東京でも屈指の賑やかさを誇っていた。
しかし、現在は地図上でその名前を見つけ出すことはできない。1943年(昭和18年)に不要駅として営業休止となってしまったからだ。
では、万世橋駅の遺構はどこにあるのか……。それは、交通博物館の中に眠っている。交通博物館は、旧万世橋駅跡にあり、解体された駅舎の基礎を流用して造られているのだ。交通博物館を神田川にかかる万世橋から眺めると、万世橋駅として建築された見事なレンガ造りの名残を、いまなお楽しむことができる。
一般の人が、交通博物館内に眠る万世橋駅遺構に立ち入ることは、いままで許されなかったが、今回、交通博物館さよならキャンペーンイベントのひとつとして「旧万世橋駅遺構特別公開」が、4月28日まで開催されていた。そんな貴重な体験ができるチャンスは、この先二度とないだろうと思い、ボクももちろん参加。遺構の一部を見学させてもらった。
貴重なプラットホームは今なお残り、ホームへ上がる階段の途中にあるレンガアーチは当時の状態のまま保存されていた。明治・大正期のレンガ建築の見事さを目の当たりにし、普段は立ち入ることのできない禁断の遺構に入れた感動も手伝い、ボクは享楽にふけた。時間が止まったかのような空間が広がる万世橋駅遺構。暗闇の向こうから、当時の人が姿を現しそうな錯覚にとらわれる。大正浪漫の世界が、そこにはあった。
